中国からの大量移住が始まる背景と影響―アメリカとの関税戦争が引き起こす中国人富裕層の国外流出

アメリカとの関税戦争によって、中国からの大量移住が始まっています。特に、地位とカネを持つ富裕層たちが、静かに国外に流出し始めているのです。これほどの規模で中国人が国外脱出を進めるのは、歴史上初めてと言われています。

背景にあるのは、中国経済の深刻な失速です。2000年代以降、西側諸国の資金と技術によって急成長してきた中国ですが、今やその両方の供給が止められようとしています。特に2023年、中国への外資直接投資額は前年比9割減のわずか45億ドルにまで激減しました。貿易黒字も細り、国内産業も苦境に陥っています。習近平政権が感じる危機感は、かつてないレベルに達しています。

このような状況の中、一部では「台湾有事」が懸念されています。しかし実際には、中国人は冷静で現実的な判断を重視するため、台湾への軍事侵攻に踏み切る可能性は低いという見方が有力です。もし軍事行動が失敗すれば、習近平政権、さらには共産党支配そのものが崩壊しかねないリスクを十分に理解しているからです。

危機に直面した中国からエリート層が国外へ脱出する動きは、歴史的にも繰り返されてきました。たとえば、明が清に取って代わられた時代には、明の高官や商人たちが東南アジアに亡命しています。またアヘン戦争後の混乱期には、沿岸部の貧困層が労働者(クーリー)としてアメリカや東南アジアに売られていきました。

今回も同じ構図です。まずは資産を持った者たちが静かに国外に出ていき、後にさまざまな層が続く可能性があります。そして、日本もこの大きな流れから無関係ではいられないでしょう。不動産市場への影響、労働市場の変化、さらには文化的な摩擦リスクなど、さまざまな課題が今後浮上してくる可能性があります。

アメリカとの経済対立がもたらしたこの時代の大きな潮目。日本は冷静に状況を見極め、柔軟かつ慎重な対応が求められています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次