オーストラリア・ビクトリア州南西部にある「ブジ・ビム国立公園」で2025年3月、大規模な森林火災が発生し、火災による影響でコアラ約700匹が空から射殺処分されたことが明らかになりました。
火災が焼いた広大な森、餌を失ったコアラたち
英ガーディアン紙などの報道によると、火災ではコアラたちの主食となる「マンナガムの木」など、約2200ヘクタールもの森林が焼失。これにより、食料供給源が消失し、火傷や外傷を負ったコアラたちはさらに深刻な飢えや干ばつの危機に直面していました。
ビクトリア州政府は「コアラたちが火災後にさらなる苦しみに直面するのを防ぐため」とし、やむを得ず航空機から狙撃による安楽死を決断。約700頭が対象となりました。
なぜ“空から射殺”という異例の手段が?
今回の処分が注目を集めているのは、野生動物を航空機から狙撃して安楽死させる措置がオーストラリアでは初めてだったためです。
ビクトリア州当局の説明によれば、現地は起伏の激しい山地で人が立ち入ることが困難な地形。さらに状況の緊急性を考慮し、空からの処分が「最も人道的で迅速な選択だった」と判断したとのこと。
コアラ=絶滅危惧種なのに…?
オーストラリアでは州ごとにコアラの扱いが異なります。クイーンズランド州やニューサウスウェールズ州ではコアラが「絶滅危惧種」に指定されていますが、ビクトリア州には約50万頭が生息し、「個体数過密」が以前から問題視されていました。
そのため、ビクトリア州ではコアラの健康維持や森林のバランスを保つため、過去にも一部地域で間引きが行われた事例があります。
とはいえ、「空から殺処分」という手段には国内外で批判的な声も多く、今回の事案は野生動物保護の在り方に一石を投じるものとなりそうです。